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少し長くなりますが、5分ほどお付き合いください。
職人の仕事を言葉にすると「手間をかける」の一言で表されます。
ひとつひとつの柱の組み合わせ、板の合わせから、クロスの貼り方まで、面倒を厭わずきっちり丁寧に仕上げる。一見きれいに見える出来上がりでも、その裏、つまり土台がしっかりしていなければ10年、20年という長い目で見た場合、大きな違いが出てきます。良い職人が建てた家は、この日本の風土の中で風雨雪、紫外線、埃にさらされ、家主に使い込まれて確実に生き続けます。
多くの注文住宅メーカーがシェアを延ばす競争をし、「年間建築棟数何千棟」と誇らしげに宣伝しています。
こうなると、ひとつひとつ手間ひまをかけていては、とても間に合いません。棟数を増やすにしたがい、簡素化・合理化が進みます。いつしか“家を造りあげる職人”は、“家を組み立てる作業員”になってしまいました。家は造りあげるものではなく、生産されるものになってしまったのです。
同時に工法は住む人の快適さを基準にすることから、“作業の効率”を重視するものに変わり、誰が作っても見た目に遜色なく仕上がれば良しとされました。
間取りは、あたかも住む人の利便性を図っているかのように宣伝しつつ、実際は企業が不良在庫を持たないよう効率をあげる、会社側の都合に住む人が合わせるという本末転倒が起きています。

家の仕上がりの良し悪しは、いかに職人に本来の仕事ができる環境を整えるか?この一点に結集されます。つまり家の品質は、工務店の在り方、経営方針に大きく左右されます。
職人が棟数に追われることなく、じっくり腰を据えて仕事にかかることができれば、品質はおのずと高くなります。
工法にも同じことが言えます。昔ながらの工法は手間がかかる。手間がかかれば、時間がかかる。しかし、日本の風土の中で生き残り、歴史に証明された工法で建てられた家の良さには疑問を挟む余地はありません。
こうした問題意識を常に持って仕事をしているころには、必然的に優れた職人が集まってくるのです。

みなさんも仕事をするとき、「この人と仕事をすると良い仕事ができる」という感覚を持つことがあると思います。職人の世界はそれぞれの職域がありますから一緒に仕事をする状況ばかりではありませんが、「この人の後で作業をするのはとてもやりやすい」という感覚を持つそうです。
仮に一人でも途中の工程に技術の劣る職人が入っていると、その後工程の職人は前工程の職人が残した不具合に対しての“尻拭い”という余計な作業、本来したくない作業をする必要が出てきます。また、“尻拭い”が満足な結果を残すことは100%ありませんから、その後工程の職人も、そのまた後の職人も一人の残した不具合のために、満足いく仕事ができなくなります。悲しいことに、それでも家は完成し施主は「きれいに出来た」と喜ぶ。それでは絶対にいけない。
自分の仕事の不出来を許すような職人は、手間暇を厭わない職人達の中では残っていけません。当然そこには別の職人が収まります。こうして良い連鎖が生まれると、それぞれの職人がそれぞれの本来の仕事だけに集中できる環境が生まれます。必然的に技術の高い職人だけが生き残り、技術の高い職人だけの精鋭集団に研ぎ澄まされていく、そんな仕組みができてきます。
技術の高い職人は棟数を競う企業とは付き合いません。また、企業の側としてもいちいち手間ひまをかける職人を使っていては棟数が稼げませんから、ちょうど磁石の同極同士のように、離れていってしまいます。
面倒を面倒と思わない。自分の仕事が好きでたまらないから、完成したらだれの目にも触れない部分の作業でさえ決して手を抜かない。たとえ人には見えなくても自分には見える。板の向こうに失敗がある。その家の寿命が続くかぎりその失敗は消えない。そしてその家の寿命を確実に縮めているのが、自分の犯したミスなのです。そのミスを絶対に許せない気質を持った集団で家を建てれば、結果は自ずと見えてきます。
職人の世界も狭い世界です。地元の小さな工務店が年を重ねるごとに良い職人との繋がりを深めていくのは偶然ではありません。また深まっていかないのであれば、何かがおかしいという証拠でもあります。

「夢をかたちに」
どこの建築会社でも使う言葉です。私たちも同様に考えています。であるからこそ、お客様に対して
「その間取りは出来ません」
「無理です」
「あなたの予算の場合、このプランの中から選んでいただきます。若干の変更は可能ですよ」
と安易に言いたくない。
“ああしたかった、こうすればよかった”と悔やみながらその家に住むのであれば、愛着が沸くことはまずありません。妥協した部分から目をそむけるようにして生活するなんて、考えただけでも気が滅入ってきます。
私たち香瑛住研は年間約20棟の小さな工務店です。営業マンは一人もいません。私たちに家づくりを任せてくださるお客様との出会いを一つとして無駄にすることは出来ません。良い家を造り、満足していただくこと、10年15年住んで、「香瑛住研に任せて良かった」と永く言っていただくことが最高の営業活動だと考えています。そのためには、お客様に妥協を強いることは出来ません。
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